
四方を川に囲まれた川島町(かわじままち)は川越の隣町。
東側を荒川、西側を越辺川・都幾川、南側を入間川、北側を市野川が流れ、さらに町内を川から引いた農業水路が縦横に走っています。鉄道は通っていません。
この川島町の東部、荒川寄りにある広徳寺(埼玉県比企郡川島町大字表76)には、北条政子が建立したと伝えられる大御堂があります。重厚な茅葺屋根の大御堂は、西方浄土を主宰する阿弥陀如来を安置した阿弥陀堂。
広徳寺には、この大御堂(阿弥陀堂)のほかにも、浄土信仰の香りをほのかに残しているものがあります。それは金堂(本堂)の屋根の両側面に取り付けられた各三体の仏像です。
中央の仏を挟むように、左に撞木(かね類を打ち鳴らす棒)を、右に拍板(木の板を数枚重ね、一か所をひもで綴じた楽器。〈こきりこ節〉で使われるびんざさらは、その仲間)を持った仏がいます。中央の仏は両手で衣の端をつかみ、踊っています。両側面とも、ほぼ同じ姿。
雲に乗ったそれらの姿から連想されるのは、平等院鳳凰堂(京都 宇治)の雲中供養菩薩群像です。堂内に安置された阿弥陀如来の背後を飾る52体のうち28体が楽器を手にしています。後世永く、雲中供養菩薩群像の模範と仰がれてきました。
広徳寺の像も、踊っている仏と拍板を持つ仏は、平等院の像によく似たものがあります。撞木を持つ仏だけ、あいにく似たものが見つかりませんが、後世、平等院の像をモデルに雲中供養菩薩群像が制作されていく過程のなかで生まれたヴァリアントが基になっているのかもしれません。
平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩群像が屋内にあるのに対し、計六体だけとはいえ、広徳寺のそれらは外にあるため、空から音楽が響いてくるような心地がします。
すでに浄土にいる気分に浸りつつ、閑静な境内を抜け、広徳寺の西方ならぬ北西へ1.5キロほど足を延ばすと、世界各地の染織品を中心に、日本と中国の書画などを収集・展示している遠山記念館(埼玉県比企郡川島町白井沼675)があります。
同館には、美術館とは別に、書院造りの大広間や数寄屋造りの座敷がある邸宅(遠山邸)が保存されていて、こちらも必見です。記念館の創立者が1936(昭和11)年に建てました。さきの大御堂同様、国の重要文化財に指定されています。
大広間の縁側にある長いながい縁桁(えんげた。縁先の柱上に渡された横材)は、一本の丸太だったと記憶します。今日では、そんなに長い木材を手に入れるのは困難でしょう。
遠山邸はテレビドラマ(水谷豊主演の「相棒」や石原ひとみ主演の「高嶺の花」)のロケに使われていたので、目にした方もきっといるはず。
広徳寺と遠山記念館へは、川越駅か本川越駅から桶川行きのバスに乗り、広徳寺なら新堀、遠山記念館なら牛ケ谷戸の停留所で降ります。停留所までの所要時間はおおよそ30分。ただし、朝の時間帯を除き、本数は1時間に1本だけ。
「川島町へ」ではなく、「川島町から」川越の高校へ自転車で毎日通学している学習者がいます。聞けば、片道1時間だとか。クラッセの日本語クラスにも自転車でやって来ます。


