
以前、内モンゴル出身のCさんと、こんな対話をしました。
わたし:羊の肉はよく食べますか?
Cさん:はい。
わたし:羊の肉はくせがあるように感じて、わたしはほとんど食べたことがありません。
Cさん:内モンゴルの羊は、葱のような草を食べているので、くせがないんです。ほかの地域で育った羊は、わたしたちもよう食べません。
Cさんの話を聞いたあとで、内モンゴルの羊が食べている葱のような草の正体にがぜん興味がわいてきました。
インターネットで調べてみると、「世界の事例No.5 モンゴル・遊牧による持続可能な利用・管理」(cwj_5.pdf (env.go.jp)、2022年12月1日アクセス)というリポートが見つかりました。
このリポートの対象は中国の内モンゴル自治区ではなく、モンゴル国の遊牧地域ですが、両者は隣接しているので、参考にはなるはずです。
リポートに羊の牧草として記されていたのは「軽草原の野蒜、コムギダマシ、シバムギモドキ、イヌムギモドキ」でした。
Cさんが言った「葱のような草」とは、「野蒜(のびる)」なのかもしれません。
「野蒜」はユリ科の植物ですが、日本にもあります。あちこちにあります。ほんの一瞬、北海道の原野で野蒜を育て、それを羊に食べさせて、大牧場主になる夢が浮かびました。しかし、日本で売られている羊肉の90%以上が外国産であることを思い出して、夢はすぐに消えました。そもそも羊肉を食べる習慣がない多くの日本人に、高価な羊肉を購入してもらうのには無理がありました。
さて、2022年の秋、あるガラス作家の個展に行ったら、ガラス製の羊が飾られていました。大小二体もあります。
作家に「なぜ羊なのですか?」と訊ねたら、「学生時代、〈美とは何か〉について考えていたとき、〈美〉という字は大きな羊の意味だと書かれているのを読んで、以来、羊が好きなんです」という答えが返ってきました。
それを聞いて、神様もきっと「よく肥えた健康な羊=美」がお好きなのだろうな、と思いました。それも「北の草原で育った美味しい肉の羊」を*。
*「美は羊の肥美の状を示し、神に薦むべきものである。」(白川静『字統』平凡社、1984年、718ページ)ただし、異説もあります。


