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◆「苹果」と「病故」
日本語クラスで、中国のかたと日本語の学習をしていたら、テクストに「入院」という言葉が出てきました。
そこで、お見舞いに持って行ってはいけない物を訊いてみると、「鉢植えの花」など、だいたい日本と同じでした。
意外だったのは「りんご」。
「りんご」を表す漢字には「林檎」「苹果」があります。
問題は、後者「苹果」の中国語の発音píngguǒが、「病故」(病死する)の発音bìnggùに似ていること。
「りんご」自体に罪はなく、たまたま不吉な言葉と音が似ていたため、お見舞いの品からは遠ざけられる結果になったようです。
◆「勉強」と「学習」、「湯」と「熱水」
中国語と日本語では、同じ漢字でも意味が異なる場合が多々あります。
萩野眞が、それについて詳しく書いていました(『われら茶柱探検隊』「中国語を学び続けて Part2」2023 Summer 045)。
例えば「勉強」。萩野は「中国語では強制するという意味。中国人に「中国語を勉強している」というときは「学習中文」と言う。」と述べています。
したがって、「私は日本語を勉強している」というときも、「勉強」は使わず、「我在学習日文」。
「「湯」も中国語ではスープを指し、日本語の湯の意味はない。」とのこと。
では、日本語の「湯」は中国語では何というのか?
中国のかたに訊いてみたら、「熱水」。納得です。
以上は、同じ漢字でも意味が異なる場合ですが、さらに萩野は、日本で生まれた日本独自の漢字が中国語に導入された例を挙げています。
電話、病院、警察、温度、会話、目的、健康、法律、自転車、そして共産党。
◆「虹」
漢字が同じで、同じものを指してはいるけれど、それが、昔の中国人には日本人とは別の見え方をしていて、異なる連想を伴っていた場合も。
代表的なのは「虹」。
西欧には、虹の根もとに財宝が埋まっている、という伝説があります。
主演のブルース・ウィリスをいちやく人気者にしたアメリカの連続ドラマ『こちらブルームーン探偵社 Moonlight』(NHKで1986年4月から放送)。「虹の橋のたもとに Somewhere under the rainbow」という回では、この伝説を上手に物語に採り入れていました。
ところが、古代中国では、虹のイメージはあまり芳しいものではありません。
前野直彬『風月無尽――中国の古典と自然』(東京大学出版会、1972年)の「虹」の項について、前野に師事した高島俊男が解説した文章を引用してみます。
「たとえば日本人にとって虹は明るい希望の象徴だが、昔の中国では、虫ヘンがついていることからもわかるように、天に住む長い虫である。それが時々地上へ水を飲みにおりてくるのがわれわれの見る虹であって、あの根もとではガブガブ水を飲んでいるのである。しかもこれは不吉な虫で、こいつがあらわれるとロクなことはないのである。」(『本と中国と日本人と』ちくま文庫、2004年、415ページ)
「虹」と同じ意味を表す「虹蜺(こうげい)」という熟語がありますが、「虹」はオスの虫を、「蜺」はメスの虫を意味するのだそうです。虹色をした二匹の長い虫……。
他方、日本の和歌には、雨の前や雨の後に現れる自然現象として虹がうたわれていて、あまり不吉な印象は受けません。
「時雨つつ虹立つ空や岩橋を渡し果てたる葛城の山」(寂蓮法師)
「むら雲の絶え間の空に虹立ちて時雨過ぎぬるをちの山の端」(藤原定家)
中国も日本も漢字文化圏に属しますが、同じ字を使っているために、かえって違いが見えにくくなっている面があるようです。
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